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音楽家、池谷隼人の日頃の想いや音楽についてを自由気ままに書き綴っていきます。 皆様のコメントやメッセージをお待ちしております。
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クラシック音楽の中でも特に独奏曲の場合、カデンツァと呼ばれる部分を含む曲が多い。
カデンツァとは、無伴奏で自分の技巧を示すようなメロディーを自由に演奏する部分。

例えば、モーツァルトの協奏曲(コンチェルト)では、曲が終わりそうな頃にカデンツァが設定されているが、サックスのための楽曲のような現代音楽と決定的に違うのは、

古典的な音楽にはカデンツァの楽譜が書かれていないということ。
現代音楽にはカデンツァの楽譜が書かれている。

だから、演奏家本人に聞いたわけではないが、
例えばモーツァルトの協奏曲のカデンツァは、
その曲のモチーフ(主題、テーマ、動機など)を参考に予め楽譜を作っておくか、
本当にその場で即興的に演奏し、そのようなことをやった巨匠たちのカデンツァが楽譜(カデンツァのみの譜面)になって出版されているものを、僕らは演奏するということになるのではないかと思う。

現代音楽に近づけば近づくほどカデンツァは作曲者自身によって楽譜が書かれている。
例えばリストのピアノ曲には、技巧をこらした即興的でカデンツァのような部分が多く見受けられるが、最初から楽譜になっている。(演奏者によってはそのカデンツァを更に技巧的なものへと発展させて演奏することもあるようだ)

今回取り組んでいるデニゾフ作曲のソナタも、知らない人が聞けば最初から最後まで即興的なカデンツァに聞こえるかもしれない。

さらに、即興的な演奏と言うのは何もカデンツァや現代音楽に限るものではない。
例えばロマン派の音楽を演奏する場合でも、テンポの緩急などによってその音楽をより魅力的なものに変えるが、それも言ってみれば即興的といえよう。

導入はこれまで。ここからが本題だよ?

では、即興的な部分をうまく演奏するにはどうすればいいのか。

はじめて僕がサックスで取り組んだ曲は、アディオス・ノニーノ(A.ピアソラ作曲/須川展也シリーズ)だった。この曲も、いきなりカデンツァから始まる。当時はこのような楽譜をどう演奏すればいいかなどさっぱりわからなかった。

結論から言うと、カデンツァのような即興的な部分をうまく演奏するために最も重要なことは

テンポの緩急

だと思う。早くなったり遅くなったり、ということを繰り返すことで、まるで即興的に自由に演奏しているような印象を与える。
だから、テンポの緩急をつけるためにまず、

テンポを揺らさずに、一定のテンポで演奏してみる実験が必要である。

例えば、8分音符のあとに3連符が使われたり。これはテンポ通り演奏すれば、テンポがだんだん速くなったような印象を与える。これに少しだけテンポの緩急をつければかなり即興的になるのだ。

他にも、わざわざフェルマータのあとにタイでつながれている音。ただ長く伸ばすことが目的ならば必要のないもの。作曲者の何かのこだわりや意図があるのだから、演奏者はそれを考えなくてはならない。

カデンツァは一見自由に自分の感性に任せて演奏するもの、というイメージがあるかもしれないが、実はそうではない。特に、最初から楽譜が書かれているようなカデンツァの場合は。

ちなみに、今日載せた写真は、デニゾフのソナタの楽譜の一部。
SA3A0005.JPG
普通3連符というのは一般的に聞いたことがあるだろう。
8分音符は1拍に2つの音を入れるのに対し、3連符は1拍に3つの音を均等に入れて演奏する。
この写真の楽譜には、7:6連符という形になっているが、7つの音符を6つ分に収めて演奏して欲しいということ。つまり、通常の音符よりも少し短く、あるいは速く演奏することになる。

今回伴奏してくれるピアノの先生はいろんな伴奏をしているそうなのだが、あるサクソフォン奏者M氏のレッスンに伴奏でついていったときのことをいろいろ教えてくださったのだ。

このように7:6連符というのは作曲者のこだわりで、通常の曲(例えばロマン派の音楽など)にはaccel(だんだん速く)やrit(だんだん遅 く)のような指示が書かれているが、その度合いは人によって違う。そこでデニゾフは、そういう個人差をできるだけ減らそうと考えて使用したのがこのような 楽譜の書き方のスタイルで、拍子や複雑な連符を駆使することで、まるでテンポが変化したように感じるという心理を利用したのだ。このような書き方をすれ ば、テンポの変化に個人差が生じにくい(実際はテンポが変化しているのではなく、連符などを楽譜通り演奏することでテンポが変化しているように感じるのだ が)。

そう、この曲はデニゾフが自分のこだわりを細かいところにまで楽譜に込めた作品と言えるのだ。通常の曲のように演奏者の裁量に任せていろんな演奏があることを楽しんでもらいたいというよりは、デニゾフ自身がこのように演奏してください!という強い意志があるのだ。

ちなみに、この曲はロンデックスというサクソフォン奏者のために書かれた曲であるが、さきほど書いたM氏はまさにロンデックスのお弟子さんということで、かなり信憑性がある内容だと思っていいのだそうだ。


このように、即興的な演奏に大事なのは、くどいようだが

テンポの緩急。

よって、特定の音だけ妙に長かったり短かったり、一部分だけ妙に遅かったり早かったりするのではなく、だんだんとテンポが変化するようにしなければならない。
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プロフィール
HN:
池谷隼人
年齢:
39
HP:
性別:
男性
誕生日:
1985/07/26
職業:
演奏家・指導者
趣味:
睡眠
プロフィール:
5歳よりヤマハ音楽教室へ通い、ピアノ奏法に加えて楽典やソルフェージュ、作曲などを学び、13歳でサクソフォンと出会う。

第3~4回静岡ピアノオーディション合格し、受賞者記念発表会に出演。

第14回管楽器個人重奏コンテスト高校生の部 東海大会第2位、中日新聞社長賞を受賞。

第2回ルーマニア国際音楽コンクール管楽器部門第3位を受賞。旧東京音楽学校奏楽堂で開催された入賞者披露演奏会ではバラード(トマジ作曲)を演奏する。

第36回新人演奏会オーディション合格、審査員特別賞を受賞。(東京国際芸術協会)第36回新人演奏会では室内小協奏曲(イベール作曲)を演奏する。

第1回ブルクハルト国際音楽コンクールで1~3位なしの審査員賞を受賞。(東京国際芸術協会)

第25回日本管打楽器コンクールセミファイナリスト。

第15回浜松国際管楽器アカデミー&フェスティバルに受講生として参加、選抜受講生によるプレミアムコンサートに出演。

現在、ピアノ伴奏をしながらサクソフォンの演奏活動および後進の指導にあたる。
ソレイユカルテットアルトサクソフォン奏者
トリオ「湊」のサクソフォン奏者兼アレンジャーとして活動中。
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楽器:YANAGISAWA A9937PGP
マウスピース:Vandoren A28
リガチャー:魔法のリガチャン、Woodstone ピンクゴールド
リード:Vandoren Traditional 3, 3 1/2

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楽器:YANAGISAWA T992 (ネック:管体シルバー、ピンクゴールドメッキ)
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